日本人はコマーシャルによってハゲになっている

日本人が今、もっとも気遣うのは、においです。「クサ~い」という言葉にひどく敏感です。それを証拠に、汗のにおい、体臭、口臭のみならず、くさいのがあたりまえの大便のにおいまでとる「消臭グッズ」が花盛りです。

シャンプー、リンス、コンディショナーなども消臭効果をうたったものがたくさんあります。汚れやべ夕つきをすっかり洗い流してサラサラヘアにし、髪にほんのりよい香りをつけるのが、シャンプー類の役目といったところでしょう。

そのにいを気にすることがひいてはハゲの原因になっているのではないでしょうか?

そもそも、なぜ、私たちはこんなにもにおいを気にするようになったのでしょうか。

最近、テレビや新聞、雑誌などの広告でも「においを消そう、清潔にしよう」というものがやたら目につきます。そうした映像をくり返し見せられることで、「におい=悪」「人に迷惑をかける」「嫌われる」、そしてにおいがするだけで「汚い」と思い込む思考回路が無意識にもつくられてしまっているのでしょう。

そんなコマーシャルが、自分がにおっているのではないかと悩み続ける「自己臭症」や、何時間も、あるいは一日に何度も手を洗い続ける「アライグマ症候群」などの精神的障害を助長していることは間違いないでしょう。

「朝シャン」という言葉が流行したこともありましたが、一日に朝と夜の2回もシャンプーを使っている人がいるのだとしたら、これも異常なことです。

においにおける問題は、さらに深刻です。「おまえはクサイ」と友だちにいわれるのが小中学生にとってもっとも傷つく言葉になっていて、においが仲間はずれの理由になるなど、いじめ問題に直結する事態になっているのです。

「恐怖をあおることで、政治家は有権者に自分を売り込み、テレビやニュース、雑誌は視聴者や読者に自分を売り込み、権利擁護団体は入会を勧誘し、やぶ医者は治療を、弁護士は集団訴訟を、企業は商品を売り込む」と語っているのは、社会学者のバリー・グラスナーです。

このように、恐怖は人を動かすもっとも強力な方法となります。

人間はコミュニケーションの道具として言語を使う唯一の動物です。たとえば自然界の動物は親の怖がる姿を見ることで恐怖について学習しますが、人間はそれに言語を通した学習が加わります。

しかも現代は、テレビやインターネット、携帯電話などの出現で、時代や場所を超えた学習ができるようになりました。つまり、弱肉強食の世界に生きる動物より、私たちははるかに恐怖を学習しやすい環境に生きているということです。

日本人の清潔志向や消臭志向は、日々くり返し流される情報が脳に刷り込まれて、後天的に学習した恐怖から生まれるものです。企業はそれを商品のマーケティングに実にうまく利用しています。

こうした新たな視点を持って、シャンプー類のコマーシャルを見てください。

人気女優が、艶やかな美しい黒髪をサラサラ~ツとなびかせて、そこに商品の映像がクローズアップされます。「あんな美しい髪になりたい」「このシャンプー類を使えば美しい髪になれる」という思考が脳内で繰り返されると、「きれいな髪になるためには、あのシャンプーを使わなければいけない」という思いが生まれるでしょう。

その半面、自分の髪を省みて、「美しくない」「におうのではないか」と漠然とした不安を感じるようになります。

よって、消費者に「あんな美しい髪になりたい」と印象づけることができれば、企業としては大成功といえるでしょう。反対に、あなたがそう思ったのだとしたら、企業の思う壺にははまったということになります。

しかし、よく考えてください。コマーシャルはイメージを伝えているだけで、登場する女優のような髪になれるとは確約していません。そもそも、本当に人気女優がそのシャンプーを使っているのでしょうか。それは、本人にしかわからないことです。

最近は、男性専用のシャンプーも人気です。やはり人気の芸能人が「べ夕つき、においをとる!」などのセリフをいいながら、フサフサの髪を洗っている姿をくり返し見せられていると、フベタつきやにおいはとり除くべきもの」=「髪によくないもの」と思ってしまうところでしょう。

不安をあおって恐怖を植えつけ、購入意欲を高めさせるコマーシャルは、一種のおどしではないかと思うことがたびたびあります。そうとはいえ、シャンプーを使えば本当に髪が健康になるのならば問題ありません。しかし、そうではないのが現実です。

私は、日本人の薄毛の一因は、シャンプー剤にあると思っているのです。